GHOST TAIL

JuJu:怖い話と百物語

百物語

組体操
1999年/投稿者: (ハリー)

このお話は私が中学生の時にA先生から聞いたお話です。

ある夏の運動会の練習の日 うちのクラスは「組体操」の練習を行っていました。

その日はとても雨が強く外で練習する訳にもいかなかったので

他のクラスも含め、体育館で練習する事になりました。

体育館といっても今のような大きいものではなく、当時は木造の小さな体育館でした。



低い天井の上には換気用のプロペラが回っていて

床などは至る所で 「ギシギシッ」 と木のきしむ音がする古びた体育館でした。

その体育館で私達のクラスは 「ピラミッド」というテーマを練習していました。

一番下に5人の人がいて、その上に4人 その上には3人

またその上には2人 そして一番上に1人の人が乗るという例の奴です。



て、練習が始まりました。

うちのクラスは人数的に丁度2組のピラミッドができるので

2組いっせいに「一番上の完成」までの練習をしました。

下から順にどんどんと完成していきます。

4人、3人、2人と順調に完成に向かっていきます。

そして、ようやく最後の一人が一番上に辿り着いたようです。

こっちの一組は完成したみたいなので もう一組の方の様子を見てみます。

ここも順調に3人、2人と、あとは一番上が登って完成です。



「みんな組体操はもう大丈夫だね!」



と 私が生徒達に呼びかけていた、その時!

私は息を呑みました。






二組目のピラミッドの真上に

「換気用のプロペラ」 がむきだしで回っている事に気がついたのです。







しかし二組目の一番上はもう完成しています!
















「ちょっと!!一回降りて!」
















そう叫んだのですが・・

何を言われたのか解らなくなったその生徒は

とりあえず「降りなければいけない」と思ったのでしょう・・

焦って下に向かって行こうとしたその時・・

彼はバランスを崩してうっかり





「立ち上がってしまった」のです・・





私は思わず叫んでしまいました!





















下のピラミッドの生徒達は・・ 「おい!上何やってんだよ!」

そう言う彼らの背中は血で真っ赤に染まっていました。

特に上から2番目の人達は 「何か上からポタポタ滴れてきてない?」

そう言いながら一番上を頑張って見上げてました・・

「うわぁぁぁー!!」

「おい早く崩せ!!」

二番目にいた生徒達が言いました。





















そう、一番上の生徒は換気用のプロペラで

「右半分の顔から後頭部にかけて 削ぎ落とされてなくなっていたのです」

すぐに救急車を呼んだのですが、その子が助からないのは一目瞭然でした・・

即死でした。

あんな事故があったものですから練習どころではありません。

私達学校側に大きな責任があった事を強く反省し その年の運動会は中止にしました。

やがて時がたち、私の受け持つ生徒達も無事卒業し

私も新しい生徒達を受け持つ事になりました。











そしてまた、運動会の季節がやってきました。

過去にあったあの忌まわしい事故を思い出してしまいましたが

今はあの体育館は壊して新しい体育館になってしまったので

多少なりともあの時の記憶は薄れていきました。

そしてまた毎年恒例の組体操「ピラミッド」の練習が始まりました。

流石にこれがテーマになると思い出してしまいますが

今はそんな事を言っている場合ではありません。

みんなが一つになって頑張っているのです。

「しっかりしなければ」 そう思いながら、練習最後の日も無事終了しました。











そして運動会本番の日 その日は天候にも恵まれ、朝から雲ひとつない快晴でした。

リレーや騎馬戦が終わった後に いよいよ男子の組体操がやってきました。

しかしその日に限ってうちのクラスの男子が 一人風邪で欠席してしまったのです。

ピラミッドは一組は完成しますけど もう一組の一番上がいなくなってしまうのです。

今は本番ですから うちのクラスだけで時間をとるわけにもいきませんし

仕方なく「一人足りない」ピラミッドを 作る事になりました。

一組が無事完成して いつでも笛の合図で崩れる準備ができました。

もう一組の方を見ると そちらも完成していたのですが・・・











何か変なのです・・












そのピラミッドは最後が 「2人」で終わってるはずなんですが

誰かが一番上を目指して登っているのです!

一番上になる生徒は今日風邪で休んでいるはずです・・

なのにその「誰かが」 みんなと同じ格好で一番上にいるのです!!











私は背筋がゾッっとしました!

よく見てみるとその一番上にいたのは






数年前に体育館のプロペラで顔を削ぎ落とされたあの生徒だったのです・・






どうしてもあの時の組体操を完成させたかったのでしょうか。

それともあの時上にプロペラがある事の警告が遅れ

死んでしまった事を恨んで出て来たのでしょうか・・

あの時の少年の顔が今も目に焼き付いて離れません・・