GHOST TAIL

JuJu:怖い話と百物語

百物語

薄い影
1999年/投稿者:(zen)

これは私の友人A子さんから聞いたお話です。

私のお仕事は、ごく普通のOLで

その日も仕事を終えていつも通り普通に家に帰るはずでした。

それがある日・・



会社が終わりいつもの様に時間通りに家路に向かいました。

その日はいつにも増して上司の機嫌が悪く

私や同僚の人達も少々疲れていました。

その日は早く帰りたかったので いつも通ってる道とは違った道で帰りました。

そっちの道はいつもより近道なのですが あまり通りたくありませんでした・・

何故かと言うと、その道で帰ると 「小さな踏み切り」を通らなければいけないんです。

その踏み切りなんですが友人から聞いた噂によると




「出る」




らしいんです そこ・・

なにやら昔そこで飛び込み自殺した人が多かったらしいのです。

そんないわくつきの踏み切りですが

私のアパートはその踏み切りを越えてすぐの所なんです。

その日は疲れていたから早く帰ってすぐにでも寝てしまいたかったのですが・・

「踏み切りさえ渡ってしまえばすぐだ!」

そう思った私は思いきってその近道を通って帰りました。







しばらく歩いていると例の踏み切りが見えてきました。







「あぁ、やっぱり嫌だな〜・・」

なんて思っていると・・

「カンカンカンカン!」 と電車が来たのでしょう

踏み切りの信号が鳴り始めました。

その時、私と反対側の踏み切りに立ってる

サラリーマン風の男性と一組のカップルが見えました。
















「よかった。人がいる!」














そっと胸をなで下ろしてるうちに私はある事に気がつきました・・

向かいに立ってるあのサラリーマン風の男性・・

一組のカップルの方と比べるとなんだか



















「影が薄い」のです。



















それになんだか全体がぼんやりしている様にも見えました。

わずかな街灯で、今日は私も疲れてましたから

「あぁ・・疲れてるんだな・・」と思ってたいして気にしてませんでした。

そのうち 「ガーッ!」と電車が来て、遮断機が上がりました。

サラリーマン風の男性と 一組のカップルがこちらに向かって歩いてきます。

私も同じく踏み切りを渡ります。

そこでまたふと、気がつきました・・













あのサラリーマン風の男性、やっぱり影が薄いのです。













ちょうど街灯の下を歩いているのにもうほとんど影が無いに等しいんです。

ちょっと恐くなった私は

そのサラリーマン風の男性から離れるようにして踏み切りを渡りました。

横目でチラチラと見ながら私は急いで踏み切りを渡ろうとしました。

そして丁度その男性とすれ違い私の視界からその男性が消えたとき・・

































「よくわかったね・・」































私の頭のすぐ近くで男性の声が聞こえたのです!

急に背筋がゾッとして悲鳴を上げたくなりました。

私はとっさに後ろを振り向きました・・

しかしそこには一組のカップルの後ろ姿しかありませんでした・・

「よくわかったね・・」

影が薄い事に気がついた私に対するメッセージだったのでしょうか・・

後で地元の人にこの踏み切りの事を聞くと

この踏み切りで自殺する人が増えてから

頻繁にこの様な不思議な出来事が起こるらしいです。

それ以来、あの踏み切りは恐ろしくて2度と通っていません。

自殺して寂しくなった彼らはあの時私を呼んでいたのでしょうか・・・・