私の母はカラスが好きです。
でも以前はそれ程でもなかったそうです。
それは私の生まれる2年前 父と母がとある旅行の帰りの電車に乗っていた時の話です。
ボオ〜ッと電車に揺られ外を眺めていた母は、ふと何かが飛んでいる事に気付きました。
それは1羽のカラスでした。
カラスは電車にピッタリくっ付いて飛んでいたのです。
丁度母の窓の外を。
最初は、あら面白い等と考えていた母でしたが
だんだん不思議な気がしてきたのだそうです。
ずっとずっと、母の視界から消える事なく飛ぶカラス。
途中途中駅に電車が停止するとカラスも側の電信柱にとまる。
発車すれば飛びはじめる。
これをくり返します。
もう景色は大分変わり、天候もあやしくなってきました。
でも、カラスはついて来ます。
母の視界の中・・・
ひどい雨が降ってきても一生懸命飛んでいます。
何故?どうしてそこまで・・・
『何か知らせようとしているのかしら』
色々悩んでいるうちに気が付けば自分の降りる駅。
ハッと荷物をまとめ窓を眺めるとカラスがいません。
何時の間にか何処かへ行ってしまったようでした。
『一体あのカラスは何を伝えたかったのだろう?』
父と母は自宅に着き、ドアを開けた瞬間、 玄関の電話が鳴りました!
慌てて母が受話器を取ると・・・
それは父の母(要するに私の祖 母)からの電話。
『夫が亡くなったの。そっちに連絡しようとしたけれど
この台風で電柱が倒れたらしくてやっと繋がったわ』
あのカラスはもしかして。
母は私に言いました。
お前のおじいちゃんは優しい人だった。
きっとカラスに伝言を頼んで心 構えをさせてくれたのよ。
私はおじいちゃんを知りません。
でもその話を聞いてから少しおじいちゃんと接点を持てた気 がします。
私もカラスが好きになりました。
恐くなく、長文失礼しました。