このお話は私のお友達の父が過去実際に体験したお話です。
あれは私があの団地に住み出してからまもなくの出来事です・・
そこはかなり古い団地でしたが
当時安月給の私には丁度良く、住み心地はまぁまぁといった所でした。
ある日の事・・
その日はとても暑く、喉が渇いていたので家に帰るなり
目いっぱい台所の蛇口を捻ってゴクゴクと水を飲みました。
「プハーッ!」
といつもならそこで至福の一時を味わうのですが・・
何か臭いが変です・・
慌てて飲んだ為、気づきませんでしたが コップに入った水を良く見てみると・・
髪の毛です・・
コップの中の水と一緒に人間の髪の毛が入っていたのです。
それをみて私は気分が悪くなり さっき飲んだ水を吐き出しました・・・
すると吐いた汚物の中から 数本の髪の毛が出てきたのを見て私は更に吐き気を催しました。
蛇口から出て来た得体の知れない髪の毛を
私は水と一緒にたらふく飲んでしまったのです・・
しかも何か、味がひどいのです・・ 何か腐ったものを溶かしたような・・
そんな味が口の中にずっと残っていました。
仕方なく御風呂の方の水で口をゆすごうと蛇口をひねると
「ゴボッ・・ゴボ・・」
という何かつまるような音がしたんです。
「・まさか・・」
そう思い蛇口を強く捻ってみました。
するとやはり台所の蛇口と同じように水と混じった髪の毛が出てくるのです!
「なんだよこれ・・」
水を出せば出すほど髪の毛もワラワラと出てきます。
「何かおかしい!」
そう思った私は翌日水道局の方に連絡をいれ原因を調べてもらいました。
来てくれた水道関係の人が不思議そうな顔で蛇口を捻ります。
「ゴボ・・・」
やはり同じように水に混ざった髪の毛が数本出てきます・・
「なんだこりゃ・・ひょっとしたら・・上かもしれん・」
そう言いながら来てくれたその人は屋上に向かったので 私も一緒に行ってみました。
貯水タンクってありますよね・・・
あの中に何かが詰まっているらしいのです・・・
水道関係のその人がタンクの蓋を開けようとしていたのですが古くてなかなか開きません・・
「ちょっと手伝ってくんねーか?」
そう言われて私もタンクの方に向かい一番上の蓋に手をかけました。
「いいか、せーので開けるぞ」
その人は言いました。
「せーの!」
「バン!」
その瞬間私達は昇ったタンクから下に落ちていました。
蓋を開けた勢いが良すぎて落ちたのではありません・・
自分から下に落ちたのです・・
タンクの中には水に浮かんだ女性の顔があったのです。
恐る恐る改めて良く見てみると あったのは顔だけでなく
女性の体まるごとタンクに入っていたのです。
更に恐ろしい事にその彼女は
漂白されていたのです・・・
手や顔、皮膚という皮膚がすべて真っ白になっていたのです。
何故か髪の毛だけは真っ黒で水面に浮かぶその黒髪がとても不気味でした・・
「これだな・・原因は・・」
そうなのです・・ この古いタンクから来る水が私の住む部屋まで来ていたのです。
翌日、調べた結果、彼女は自殺していた事が分かりました。
屋上からボロボロの遺書が発見されたそうです・・
水道から髪の毛・・・
普通なら有り得ない事だそうです・・
この女性は私に死んだ事を気づいて欲しかったのでしょうか。