いランドセル
投稿者/吉原


私の友人Tは、もともと霊感持ちでよくそのような事に出くわすのだそうです。この話は、Tが小学5・6年生だった頃の体験談です。当時、Tは放送委員を担当していたため、学校行事の写真や動画を撮る作業を任されていました。もうじき運動会、というある時。Tと、同じ委員会のKの二人は、カメラの扱いに慣れるため放課後の応援団の練習を校舎から撮影していました。Tは別の撮影ポイントを探そうと、Kと別行動で校舎内をうろうろしていたそうです。社会科資料室の前を通った時でした。「―――あれ? 開いてる」普段は鍵がかけられている社会科資料室の扉が全開に開いているのです。中に先生か誰かいるのだろうか?Tはそこを素通りしようとしたそうなんですが、その時―――、社会科資料室の中を、素早く誰かが横切りました。一瞬でよく見えなかったそうなんですが、確かにそれは「黒いランドセルと黄色い帽子を身につけた小さな子」だったそうです。高学年として注意しなければいけないとTは資料室を覗き込み、その子が過ぎて行った方をみながら、「おーい、ここは勝手に入っちゃあ―――、」………誰も、いない。そして資料室の中は、大きな地球儀や世界地図などで埋め尽くされており、人が横切れるほどの空間などまったくありません。もちろん、誰かが隠れられそうな空間もありません。「―――………なんで?」Tは一気に血の気が引きよくわからぬうちに逃げ出していました。必死に資料室から離れようとひたすらに走り、知らぬうちに自分のクラスの教室に辿り着いたそうです。見知った教室に安心したTは、とりあえず窓辺からグラウンドの応援団の撮影を始めました。そのうちカメラを机に置きぼんやりとグラウンドを眺めていると、―――さっきから、異様に窓がガタガタと揺れている。風がよほど強いんだろうか……?ふと、グラウンドに再び目を向けると、応援団の持っている大きな旗。全くはためいていません。がたっ、がたがたっ、がたがたがたっ、―――風、吹いてないの?そう解った途端、Tは弾かれたように窓から離れ、掃除用具ロッカーの影に隠れました。―――この時点で、TはKのところに戻ればよかったと激しく後悔することになります。きゅっ、きゅっ、きゅっ、扉の向こう。廊下から、上履きが床をこするような音が聞こえてきたのです。Tは「だれかがきてくれた!」と思い、安心して扉を開けようとしました。………が、きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、―――様子がおかしい。いつまでたっても、その音は止むことなく教室の扉の前にとどまっているのです。まるで、そこで足踏みをし続けているかのような。―――これは、人間じゃない。いよいよ逃げ道が無くなり、Tは必死に扉が開かないよう押さえつけました。そこでTは力を入れるため、無意識に曇りガラスの窓に頬をくっつけて―――、見てしまったのです。目の前、曇りガラスの向こう。黄色い帽子を被った、背の低い男の子の、―――生気のない顔を。がたがたがたがたがたがた、きゅっ、きゅっ、、きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、後ろには無風で揺れる窓。目の前には、得体の知れない足音。必死に、今この時が過ぎ去ることを祈りながらTは扉を押さえつけ、しゃがみこんでいました。―――と、「Tちゃーん? こっち撮影おわ、…ったけど」Tがしがみついているのとは反対にある扉から自分の仕事を終えたKが顔を覗かせていました。「………K〜、怖かったよぉ〜〜〜!!!」あまりの安堵感に、Tは泣き出してしまったそうです。「………ところでさ、この扉の向こう、」「―――黒いランドセルと安全帽があったけど、誰の?」

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