部の家
投稿者/鎬


櫻も散り始め、季節は夏へと向かう。時折寒い風と嵐が、まだ春だと云うことを教えてくれる。 最近よく夢をよく見る。 平行世界なのか、それとも、ただの浮遊霊の夢なのか。 同じ風景、同じ家、よく『しっている』ひとたち。 ――そう、よく、しっている、のだ。 誰なのだろう? あの、死んだ目をした男は。 私の前に現れる男。
私の『家族』を殺す男は。 森林公園、展望台、こちらの世界によくにた電車、街、 でも少しずつ違う。 実家によく似た、でも違う家。 『岡部』 死んだ目をした男が、家に入ってくる。
隠れている兄弟を殺す(私には兄弟はいない)。 私は逃げ回る。 姉が死ぬ。 死体が晒される。 鮮やかな帯がだらりと畳の上に血の痕を残すように落ちている。 姉も死んだ目をして、私を追ってくる。 「サァ オマエモ イッショニ ユコウ」 私は妹を連れて逃げる、でも逃げ場所はもう無い。 「お前は私の後にいなさい!」 死んだ筈の姉に、私は斧を向ける。 「ネエサンヲ コロスノ?ねえ…鎬」 死んで、腐っていく筈の瞳。 後には怯える妹。 私には、この妹を守る、否、守りたい! 「おねえちゃんは死んでるのよ!」 斧を振り上げ―― その瞬間の、悲しげな姉の瞳―― 「!」 音が聞こえるくらい、盛大に目を覚まして、いつもの天井。 半身を起こして、出た言葉に戦慄する。 『お か べ の い え』
知らない。 そんな家は…。 最近続く悪夢はいつもあの家で、色々な場面が出てくる。 だけれど、あの優しい姉さんや、妹、両親、 そのひとたちを殺すあの男。 まだ最後まで見ていない。 まだ、最期まで見ていない。 今夜、眠ればまた見られるのだろうか、 「岡部の家」を。 これは只の悪夢だと思いたい。 だけれど手に残る感触。 斧は重かった。 妹の手の温かさ。 姉さんの帯の鮮やかさ。 振り上げる瞬間の姉さんの――なみだ。 色々な事をここに投稿してきた。 だけど、あの夢は『夢』と思えない程、リアルすぎる。 現実に近すぎる。 知らない老婆が夢で云う、 「岡部の家は――…しなかった。だから仕方ない」 姉が殺される、のが、仕方ない? 「岡部の家」とは何なのか。 何処にあるのか。 あれは、誰なのか。 理解らないことだらけだ。 ほどく手は唯一つ。 眠り、そして 夢を見る、それだけだ。

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