あれはまだ私が中学校にはいる前のことでした。
当時、両親と一緒に寝ていた私は 妙な気配に目を覚ましたのです。
頭上にはふすまがあり、見ると少し隙間が空いています。
誰かがトイレにでも行ったとき閉めそこねたのだろうと
気にせず寝てしまおうとしたときです。
小さく 『カタン』 という音が聞こえ、それはふすまを開ける音に変わりました。
・・・やけにゆっくりと。
不審に思った私は、思い切って頭上を見上げたのです。
まず目に入ったのは皺皺の手。
その手はゆっくりとふすまを開けていくのです。
見たくもないのに目がそらせず 私はふすまの向こうにいるモノを確認。
それは老婆でした。
きちんと正座をした、白髪の老婆。
その老婆は私の枕元まで来ると 顔を覗き込んできました。
寝た振りをしていると 老婆は私の目を無理矢理開かせようとする。
私は怖くなって・・・
そこで気を失ってしまいました。
ひょっとしたら夢だったのかもしれません。
しかし、私の頬にかかるあの髪の毛の感触と
ふすまについた手形と枕元に落ちていた大量の白髪 それの説明はどうにも付きません。
今でもふすまに隙間があると怖くて眠れません。
もしかしたら、その向こうには誰かが居るかのしれないのですから。