ある日、私の住んでいる団地に若い夫婦が越してきました。
その夫婦には小さな子供がいました。
その子は女の子で、とても可愛い子でした。
その3人家族が越してきたのは丁度、私の部屋の向かいの部屋でした。
そのことから、私はその家族と仲良くなり、女の子とはよく遊ぶようになりました。
とても幸せそうな家族でした。
しかし、ある日、その家族の奥さんの姿を見なくなりました。
不思議に思いましたがあまり気にも止めませんでしたが
3ヶ月程見かけずにいると不 安になり、 ある日聞きました。
聞いた相手はその家族の大黒柱である夫、Yさんです。
しかし、返ってきたのは「出かけていまして・・・・」の言葉だけだったのです。
女の子はその時くらいからあまり話さなくなってしまい 私自身少しさみしい日々が続き ました。
そんな、ある日私がゴミを出そうとドアを開けると
丁度Yさんが会社に行くところだったのでしょう
向かいのドアからスーツ姿のYさんとそれを見送りに来たあの女の子が出てきました。
Yさんは私には気付かず、女の子に
「じゃ、行ってくるから」 と言いました。
すると女の子は
「パパ・・・あのね、聞きたいことがあるの。」
と、言い返したのです。
Yさんは 「なんでも聞いていいよ」と言いました。
次の瞬間、女の子の口から出た言葉に私は息を呑みました。
女の子は言ったのです。
「どうして、ママをいっつもおんぶしてるの?」
Yさんは何も言わず目を見開いていました。
そして、私も動けずにいました。
Yさんの背中には何もなかったからです。
それから、数日後女の子は姿を消しました。
行方不明・・・・と、されてYさんは引っ越しました。
そう、Yさん1人で。
ただ、私は思いました。
もしかしたら、Yさんの背中にはあと2人・・・
誰かが乗っかっ ている のかもしれないと・・
そして、そんな出来事も忘れかけて早3年が経ちました。
その日私はのんきにテレビを見ていたのですが、チャイムが鳴りドアを開けました。
そこには、3年前向えの部屋に住んでいた夫婦の奥さんと、あの女の子が立っていまし た。
歳はあの時のままにしか見えませんでした。
そして、私に向かい言いました。
「今度、向かいの部屋に越してきました。」・・・・と。