GHOST TAIL

JuJu:怖い話と百物語

百物語

壊せない家
2000年/投稿者: (zen)

これは私の知り合いのSさんが実際に体験したお話です。


ある時Sさんは一軒家の自宅を改築する為に仮住まいの家を探していました。

Sさんとしては住む所は改築工事が終わるまでの期間

つまりちょっと短い間だけの雨風が凌げれば良かったので

できるだけ安い物件を探していました。

沢山の不動産をまわったのですがなかなか短期での入居者募集は数が少なく

値段もSさんが希望するものがありませんでした。

Sさんが半ばあきらめて途方に暮れている時に ある不動産から一本の電話が入りました。

その内容は 「希望の値段の範囲内でしかも短期も可能な物件がある」との事でした。

Sさんは大喜びで次の日その不動産に行きました。

ここでSさんはひとつ不思議に思う事がありました。

「どうして不動産に行った時に紹介してくれなかったのか・・」

「何故後から電話で紹介したのか・・」

「まぁ、色々探していてくれたのかもしれない・」 と、そんな事を考えているうちに

その希望の物件の詳細が記された資料を手渡されました。



・・・・・・・・



一通り目を通しましたがなんてことのない普通の一軒家でした。

どこにでもあるごく普通の一階建ての家です。

値段も場所もSさんにとってどれも都合のいいものばかりで

Sさんは直接その物件を見に行く事もなくその場で契約を済ましてしまいました。




そして入居一日目・・・・




とりあえず、生活に必要なものがある程度揃っていれば良かったので

Sさんは前の自宅から運んで来た荷物を 適当に部屋に置きました。

玄関から入って廊下があり右側に一人で住むにはちょっと大き目な和室

その奥に四畳半程度の洋室。

廊下を真っ直ぐ行って出た所にキッチンとリビングがありました。





「写真で見たのとちょっと違うな・・」





なんて思いながら その日は疲れていたのですぐに寝ました。







その夜・・







妙に寝付けないSさんはビールでも飲んでから寝直そうと思い

冷蔵庫のあるキッチンへ行きました。

寝ぼけた目でフラフラっと歩いて冷蔵庫の扉に手をかけたその時・・



「ピチャン・・チャポ・・チャポ・・ピチャ・・・」



風呂場の方から何やら水の音がします。

Sさんはさっきお風呂に入ったばかりだったので

「蛇口でも閉め忘れたか・・」

そんな事をぼんやりと考えながらお風呂場に向いました・・・





「ピチャン・・・ピチャン・・」





風呂場に近づく程、その音は大きくなっていきます。

風呂場に着くなりSさんは思わず声をあげそうになりました。

そのお風呂場のドアはスライド式のドアで全面くもりガラスなのですが








そのガラスの向こうに人がいるのです!








この家に住んでいるのはSさんだけのはずですが

どういう訳か、何者かがこの家にいたのです。


「ピチャン・・ピチャン・・」


ガラス越しでなんとなく中にいるのは男性と思われます。

Sさんは震えながらも思い切ってドアを開けました・・・



















「ガラッ」





















「うそだろ・・・・・」
























Sさんは自分の目を疑いました。

そこにはさっきうっすらと見えた男性はおろか

浴槽にお湯すら張っていないお風呂場があったのです。

シャワーとカランが一緒になった蛇口からも水など一滴も滴れてませんでした。

ただの誰もいない風呂場があったのです。

「な、なんだよ、これ・・」

怖くなったSさんは逃げるように布団へ戻り次の日を迎えました。

翌日・・ 仕事から帰ってきたSさんは、まだ慣れない家なので

「とりあえず今日はもう寝るか・・」

そう思いながら風呂にも入らず 布団を敷いてとっとと寝床に着きました・・



その夜・・・



昨日と同じく、また妙に寝付けなくてSさんは目覚めました。

「なんでこんなに寝付けないんだろう・・」

「きっとまだこの家にもなじんでないからだろう・・」

「風呂でも入って疲れを癒すか・・」

そんな独り言を言いながらSさんはお風呂場へ向いました。


















「ガラッ」



















「今日も一日疲れたな・・・」

そういいながらSさんは浴槽に溜まったお湯に浸かります。

暖かいお湯がSさんの体を包み込んでいきます。

ふとSさんは今自分が浴槽に浸かっている事にゾッとしました・・・












「このお湯は・・・・一体誰が張ったんだ・・」











そうです、Sさんは1人で住んでいるはずなのに

Sさんが帰ってきた時にお湯が浴槽に溜まっているはずがありません。

しかも今張ったかのようなこのお湯の温度・・・

Sさんはここでやっと昨日のお風呂場の男の事を思い出しました。

「早くあったまって出よう!」

そう思い、浴槽に溜まったお湯で顔を洗おうとしたその時!











見知らぬ男の顔が浴槽の中で揺れていたのです!











「うわぁぁぁぁーーーー!!」










怖くなったSさんは叫びながら浴槽を出ようとしました。

が・・・・その時 Sさんは天井に何かの気配を感じました。

というより、視界で何かが見えるのです・・・

ハッと上を見るとそこには











さっき浴槽の中に映っていた男の顔が天井から覗いていたのです!

つまり浴槽の中に映っていた顔は天井の顔が反射していたのです。













「うあぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!」















天井から突き出た男は横目でじっとこっちを見ていました・・・・・


翌日この物件を紹介した不動産にSさんが事の一部始終を話した所

その不動産屋の口から驚くべき事実が語られました・・・

4年程前にこの家のお風呂場で一人の男性が借金を苦に自殺したそうなんです・・・

なんでも発見した時はすごい状態だったとか・・・・

その自殺があってから何度もその家を壊そうとしたのですが

どういう訳か、壊しにかかった工事関係者の人達全員が

何かしらの病気や事故にあっていて壊せないのだそうです・・

ちなみにその家は現在も残っています。

もう廃屋と化していますが、このお話を知っている方ならたぶん場所もわかると思います・・・・

が・・ もし面白半分で行くとしたら・・・

気を付けて下さいね・・・

肉体は死んでも魂や怨みというものは・・・